男性不妊になりやすい年齢

獨協医科大学越谷病院で実施されている精子機能検査のデータによると、子どもがいる男性と、精液に問題のない原因不明の不妊症男性のグループに精液検査を実施したところ、後者のグループは35歳を境に精子の質が急激に低下することが判明。女性の卵子だけでなく、男性の精子も35歳を超えると機能が衰え、不妊症になりやすくなることが分かりました。

35歳以上に多い男性不妊の原因

精子の数が減る

男性不妊の原因として非常に多く見られるのが、精子を生成する機能に問題がある「造精機能障害」。この障害により精子の数が少なくなる状態を、乏精子症といいます。クリニックによって治療基準は異なりますが、精液検査で1mlあたりの精子数が基準値(1,500万個)よりやや少ない程度ならタイミング法、100万以上1,000万個未満であれば人工授精、100万個以下だと体外受精・顕微授精が用いられます。

精子の濃度が低下する

2010年改訂のWHOの基準値だと、正常な精子濃度は1mlあたり1,500万個以上となっています。精液検査でこの基準値を下回ると男性不妊が疑われますが、精子濃度は一定ではなく、10~100倍の間で変動するのが特徴です。そのため精液検査は1回だけでなく、数回行った上で状態を見ることが重要です。

精子の運動率が衰える

精子の運動量が一定の基準値以下の状態を、精子無力症といいます。正常な男性の精子運動率は55%以上となっていますが、精子無力症の場合の運動率は40%未満。精子の活動する力が極端に弱く卵子までたどり着くことが困難であるため、不妊症につながるケースが多くなっています。

精子のDNA損傷

精子の数・濃度・運動率が正常でも、DNAが損傷しているという場合があります(DNAの断片化)。損傷率が高いほど精子の質が悪いとされ、とある研究によると自然妊娠できる確率は22%以下と言われています。受精・着床したとしても、流産率が高くなる傾向があるのも特徴です。精子はDNAを自己修復できないため、専門的な治療が必要です。

35歳を超えたら一度不妊検査を!

精巣では一生にわたって精子が作られますが、その機能は加齢によって低下。見た目では分かりにくいですが、妊娠に必要な力も徐々に衰えているのです。35歳を超えたら、男性も不妊症になっている可能性があります。「自分には関係ない」などと思わず、男性不妊検査を受けてみるようにしましょう。

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不妊治療を行うことによって考えられるリスク

不妊治療の方法によっては、多胎を発生させてしまう可能性が高くなると言われています。

  • 多胎による母体側のリスク:妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病をはじめとする合併症の発症
  • 多胎による胎児側のリスク:流早産、発育遅延や低出生体重児(2,500g未満)の出生、先天異常、新生児の死亡率の上昇、障害発症の可能性

多胎妊娠にともなう母子のリスクを回避するために、日本産科婦人科学会と日本生殖医学会は、学会員にむけて体外受精における移植胚数を原則1個にするように指示を出しました。これにより、体外受精における多胎妊娠の頻度は減少しています。

高度生殖医療におけるリスク

体外受精・顕微授精といった、体外で行う不妊治療をまとめて高度生殖医療と呼びますが、体外受精には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、麻酔の合併症、採卵時の卵巣周辺臓器(血管・腸管・膀胱など)損傷といったリスクの可能性があります。また、顕微授精においては低出生体重児の傾向があり、心臓や呼吸器に障害を持つリスク、自閉症や注意欠陥多動性障害のリスクが高いとする報告があがっています。その他、精子凍結に関しては、凍結させた精子を融解する際に精子の運動率が50~80%ほどダウンすることが分かっています。ただし、融解後は再度精子の精製を行い、活発な精子のみを集めて治療に用いています。今のところ、凍結保存をした精子を使って生まれた子どもに先天奇形や発育不良が多くなるといった報告はありません。

男性不妊治療におけるリスク

男性不妊治療「TESE」におけるリスクとして、創部痛、発熱、精巣上体炎、陰嚢内血腫などの合併症が考えられます。予想外の合併症が起きる可能性がゼロとは言えないため、専門クリニックにしっかりと相談をしましょう。不妊治療専門の医療機関で処方されるサプリメント(漢方薬やビタミン剤、ホルモン剤など)を用いた薬物療法の副作用やリスクについては、医師にご確認ください。(2019年2月現在)