不妊治療と障がい児出生の関係性

ネットや雑誌で「体外受精や顕微授精は障がい児出生リスクが高い」という記事を見かけ、不妊治療に不安を感じている方へ。ここでは、顕微授精と障がい児の関係性について正しい情報を解説しています。

不妊治療と障害児の関係性

現在のところ、顕微授精・体外受精によって障がい児へのリスクが高まるといった医学的データは報告されていません。障がい児出生リスクは自然妊娠と変わらないと言われています。

ではなぜ「体外受精や顕微授精は障がい児出生リスクが高い」とされているのか、原因を詳しく見ていきましょう。

障がい児発症率を左右するのは年齢だった

医学誌『The New England Journal of Medicine』に掲載された2004年の情報によれば、40歳の女性が出産した子どもは100分の1の確率でダウン症だったという調査結果があります。20歳の女性が出産した子どもは1667分の1、25歳の女性が出産した子どもは1200分の確率であることから、年齢を重ねるにつれてダウン症の発症率が上がっていることがわかります。

顕微授精を受けた女性に障がい児が多い理由

「体外受精や顕微授精は障がい児出生のリスクが高い」というのは、単純に体外受精・顕微授精を受けたことがある人とない人を比べた場合の話。体外受精・顕微授精を経験せずに出産した女性は圧倒的に20代が多いため、比較すると「体外受精や顕微授精は障がい児が出産のリスクが高い」という結果になります。

不妊治療は20代の頃にタイミング療法やホルモン治療をはじめ、30代を過ぎてから体外受精や顕微授精にステップアップするケースがほとんど。いくつかの不妊治療を受けているうちに年をとり、体外受精や顕微授精にたどり着く頃には高齢出産になるケースが多いため、一般的に「顕微授精は障がい児出産のリスクが高い」とされているのです。

年齢を重ねると障がい児出生リスクが上がるのはなぜ?

卵子は女性が胎児の頃につくられ、年を重ねるにつれて少しずつ弱ってしまいます。これは時間の経過とともに細胞分裂の力が低下したり、DNAにダメージが蓄積されるためです。

染色体やDNAなどに異常があると、先天性疾患や変形などの障がいが発症しやすくなります。

男性も年をとると障害児リスクが高まるってホント?

男性の精子の老化もまた、障がい児の出生リスクの原因のひとつ。男性は35歳を超えると精子の濃度・運動率が急激に低下します。見た目は元気で若々しい男性でも、精子内部のDNAが損傷していると遺伝子変異による奇形・障がい児出生のリスクが高まります。障がい児出生リスクを抑えるには、精子のDNAの損傷を防ぐ生活習慣を心がける、DNAが傷ついていない精子を不妊治療で採取するなどの取り組みが必要です。

感染症による奇形児リスク

加齢に伴う卵子や精子の質低下のほか、風疹・トキソプラズマといった感染症なども障がい児出生リスクを高める原因です。

感染症の中でも、とくに注意しなければならないのが風疹です。妊娠初期の妊婦が風疹に罹患すると、胎児も風疹ウイルスに感染。発達中の臓器に奇形が起こりやすくなり、先天性の心疾患・難聴・白内障などの障がいを持ったCRS(先天性風疹症候群)の子どもが生まれやすくなります。CRSの発生確率は、妊娠1か月以内の感染で50%以上。2か月以降は35%、3か月以降は18%、4か月以降は8%となっています。

感染症による障がい児出生リスクを抑えるには?

CRS(先天性風疹症候群)の発症リスクを抑えるには、MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)を摂取する必要があります。不妊治療を始める女性はもちろん、パートナーである男性、周囲の親族なども一緒に受けておくことが大切です。

妊娠・出産のタイミングを逃さず
健康な出産を望んでいる方へ

妊娠・出産のタイミングを逃さず健康な子どもを産みたい方は、なるべく早いうちから不妊治療に取り組むことをおすすめします。障がい児のリスクをおそれて顕微授精を避けている間に、卵子や精子の老化が進んで妊娠の機会を逃してしまっては本末転倒です。

同じ年齢に絞った場合、不妊治療も自然妊娠も障がい児出生リスクは大差ないとされいています。治療方法や費用、その他のリスクなど、顕微授精に関する不安がある方は、顕微授精に詳しい医師に一度相談してみてはいかがでしょうか?

不妊治療を行うことによって考えられるリスク

不妊治療の方法によっては、多胎を発生させてしまう可能性が高くなると言われています。

  • 多胎による母体側のリスク:妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病をはじめとする合併症の発症
  • 多胎による胎児側のリスク:流早産、発育遅延や低出生体重児(2,500g未満)の出生、先天異常、新生児の死亡率の上昇、障害発症の可能性

多胎妊娠にともなう母子のリスクを回避するために、日本産科婦人科学会と日本生殖医学会は、学会員にむけて体外受精における移植胚数を原則1個にするように指示を出しました。これにより、体外受精における多胎妊娠の頻度は減少しています。

高度生殖医療におけるリスク

体外受精・顕微授精といった、体外で行う不妊治療をまとめて高度生殖医療と呼びますが、体外受精には卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、麻酔の合併症、採卵時の卵巣周辺臓器(血管・腸管・膀胱など)損傷といったリスクの可能性があります。また、顕微授精においては低出生体重児の傾向があり、心臓や呼吸器に障害を持つリスク、自閉症や注意欠陥多動性障害のリスクが高いとする報告があがっています。その他、精子凍結に関しては、凍結させた精子を融解する際に精子の運動率が50~80%ほどダウンすることが分かっています。ただし、融解後は再度精子の精製を行い、活発な精子のみを集めて治療に用いています。今のところ、凍結保存をした精子を使って生まれた子どもに先天奇形や発育不良が多くなるといった報告はありません。

男性不妊治療におけるリスク

男性不妊治療「TESE」におけるリスクとして、創部痛、発熱、精巣上体炎、陰嚢内血腫などの合併症が考えられます。予想外の合併症が起きる可能性がゼロとは言えないため、専門クリニックにしっかりと相談をしましょう。不妊治療専門の医療機関で処方されるサプリメント(漢方薬やビタミン剤、ホルモン剤など)を用いた薬物療法の副作用やリスクについては、医師にご確認ください。(2019年2月現在)